心地よく、付き合ってくれるー谷川由里子さん『サワーマッシュ』

谷川由里子さん『サワーマッシュ』。
薄い緑にツヤッとした装幀が、少し洋書みたいな雰囲気もあって爽やか。
(サワーマッシュも、何かシュワっとした緑色の飲み物を想像したけれど、ウイスキーの製造方法らしいです。でも、それはそれでいい。のは後述します。)

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風に、ついてこいって言う。ちゃんとついてきた風にも、もう一度言う。
日の長い日曜日にはスカートをひるがえしてマーチングバンド
夜を巡るモノレールいつみてもピークいまこそがピーク進んでいくよ

軽やかで、でもどしっとしていて、前向きで。励まされる。

月比べしながら歩く一本道 そっちの月も見頃だろうね
改札をうつむかないで出てきたね一眼レフを首から下げて

電話でもしながら、月の話をしているんだろうか。何気ない話の中に「あんたも達者でやってるでしょ?」って、当たり前みたいに思ってくれている信頼を感じて、こちらも「もちろん!君こそ変わってなさそうじゃん!」とか、返さない訳にはいかない。何か押し付ける訳じゃなくて、弱さを語る訳でもなくて、それこそ、たまにハイボールでも携えて寄り添ってくれている気がする。
元気がない時にも、少し上を向いたら「おっ、今日は下向いてないじゃん」とか、必ず気づいてくれる気がする。

スーパーの名まえはきょうも気の抜けているほうがいい地球のために

全身にくる会いたいという気持ち山ですという山の迫力

すごく、豪快で大振りだなー!とも思う。けれど、スーパーってゆるくていいよな〜、って気持ちで、周りにあるもの、全部許せちゃってもいい気がする。自分の気持ちがいっぱいの時は、山だって味方だって、思い込んでもいい気がする。すごく、目の前にある世界や、生きることに対する信頼と、安心と、健やかさを感じる。気持ちいいなー!って、ポーズじゃなく、屈託なく言えてしまうという事は、実はすごく難しい事で、尊くて、かっこいいものだと思う。
サワーマッシュ!と、タイトルだけでも何度も口にしたくなってしまう、愛すべき歌集です。