-入荷しました!-「港の人」様 +書籍紹介 山田航 第二歌集「水に沈む羊」

当店では、出版社様より直接、歌集などを中心に仕入れさせて貰っています。
先日、「港の人」様より、幾らか入荷戴きました。
詩歌、文学、学術系を中心とした出版社さんですが、装丁が綺麗で有名ですね。
なにか一冊とりあげたいなー と思ったのですが、北海道の書店としては、外せないかな・・・!と、山田航さんの歌集です。

「水に沈む羊」タイトルだけだと、すごくファンタジックな印象も持っていたのですが・・・寧ろ、デジタルな表紙。ででん

羊+デジタルだと、「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」とか思い出しましたね。映画「ブレードランナー」の原作にもなった、ややディストピア的なSF小説です。私の妄想かなーとも思いましたが、意外と外れじゃないかも・・・とか思いました。理由は後ほど

山田さんの歌は、陰があり、とても抒情的で、一見デジタル感とは無縁な感じがします。

■抒情

きみはそれを雨に喩へたまばたきのすきまを絶え間なく落ちる声
・・・まばたきの隙間の雨、涙、ということでしょうか。文語表現によるこの厚み。きゅんきゅんします

葡萄色の産科医院へ告げに行くずつとふたりで生きてゆくこと
・・・子どもが出来て、生涯の伴侶になる事。病院に告げる。というのが、子どもに誓う。という感じがして、はっとします。なじみのない、下手したらイミテーションの教会に愛を誓うより、こちらの方が、現代ではリアルなんじゃないでしょうか。葡萄も、キリスト教を連想させますね。

■社会へのまなざし。むしろパンク
ただ抒情で終わることなく、社会への冷静な眼差し、批判的な視点も多くあります。

五百年のちの人類 流星の塵を処理する技術はなやか
また塾ができたねこの街の夜はさながらこどもたちの王国
月の世のビルの上より降り注ぐ恋人たちの中絶費用

・・・無作為に引いてしまったので前後の流れが切れてしまいますが
五百年後の人類は、宇宙のごみ処理にも難なく手を出しているだろう。という事ですが、はなやかなゴミ処理。空しい感じもあります。

二首目、街が塾で溢れて、子どもの王国のようになっている・・・なんだか、夜景でも見る様な言い方が冷ややかです。

三首目、最後にいきなり出てくる、中絶費用。そこまでがすごく綺麗な分、かなり過激な感じがします。月≒妊娠 という連想

このように、むしろ過激な言葉も多い印象も受けました。

また雨だ唾液まみれの言ひ訳ももう届かない場所にきてゐる
・・・唾液まみれの言い訳・・・ボロ雑巾のようである。かなしい

郷愁へ向かふあやふさ草原の蛙声、暴走族の爆音
・・・一見なんだそりゃ、という感じもしますが、田舎といえば暴走族(違うか笑) 綺麗なだけの郷愁より、こういう現代の歪みのなかに、リアルを求めている。

きちきちのリチウム電池すきまなき思想家としてのグーテンベルク
・・・ちょっと難しいかなーとも思ったのですが、グーテンベルクと言えば印刷技術を生み出した人で、現代の科学や量産への道を開くきっかけとも言えます。きちきちのリチウム電池。コミカルな語感ですが、それもあいまって結構いやですよね(笑)
プロダクトや機械に溢れる志向としてのグーテンベルクなのかな、と思います。

舞ひ上がるフリーペーパー 街路樹に街は対称形を崩して
・・・量産されたフリーペーパーの崩壊。整えようとした街路樹も有機的になり、機械化の歪みが露わになる、感じがします。

時に過激な言い方で、現在のリアルな叫びを、批判も交えて形にする。パンクだな~なんて、思いました。

■内面を見つめた歌
純粋に、内面をみつめた歌も多くあります。全体を、陰が覆っています。

監獄と思ひをりしがシェルターであったわが生のひと日ひと日は
・・・檻だと思ってたら、自分で作った壁だったって奴ですよね・・・分かるわぁ(笑)

屋上から臨む夕映え学校は青いばかりの底なしプール
考へろなぜ教室に棺桶のかたちを真似たものが多いか
・・・スクールカースト底辺出身としては、共感しか生まれません

■その他

棄てられた草原、そこに降り注ぐ星のひかりを愛さう、せめて
・・・棄てられた草原。ややファンタジー感もあり、せめて、の喪失感。倒置法の降り注ぐ星のひかり。なんて、やや中二感も出るんですが・・・このフィクションぽい陶酔感が、むしろ、デジタル世代にはリアルだったりして。刺さりました。

昭和製のコイン入れれば震へ出す真夏を回りつくすさざなみ
・・・こんなにも、季節感と、翳りと、躍動感のるコインランドリーが、いまだかつてあっただろうか・・・!?好きです。

 

一発目と思って、引き過ぎました!装丁もとても綺麗なので、これは実物を見るしかないです!
来週から、書肆侃侃房さんのフェアも始めるので、そちらからも紹介していきます!お楽しみに!(むしろ私が楽しみ)

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