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岡野大嗣さん、待望の第3歌集『音楽』。
https://gatangoton.base.shop/items/55630230
少し小ぶりで、可愛らしい工芸品のような装丁。紙が継がれた立体感のある継表紙です。
「忘れたくないものを忘れても平気になるために短歌を作っている。今はそう思っている。」という帯文の通り、美しく、大切な一瞬を慈しむような柔らかさや抒情に満ちています。
借りたままの古いゲームのサントラと貸したままのそのカセットのこと
ポスターの右下の画鋲ゆるくって風ぬけるたび騒ぐ右下
空港のベンチは床が近くって履いてる靴をすきになる場所
特別なこと、複雑なことではなくシンプルな語りの中に、貸したカセットや、ポスターを揺らす風、空港の床など、時間や場所へのあたたかな気持ちが描かれています。
音楽は水だと思っているひとに教えてもらう美しい水
ワイパーを一番速いやつにして負けないくらいの歌をうたった
シンガーの路上を遠ざかりながらああファルセットお上手ですね
優しさが、自らの中から生まれてくることも特徴的だと思いました。揺るぐことなく、美しいもの、豊かなものと一対一の関係がくっきりと描写されていて、根を張っているよう。それこそ、一定のリズムの中で変化する音楽のように、するりと心に染み込んできます。
かごの影きれいで自転車をとめる春より春な冬のまひるに
こたつから抜けない足で着地するあなたの足のうら よいお年を
籠に春を感じたり、足の裏を感じながら年の瀬の挨拶をしたり。突飛なようでいて、こっくりと納得させられてしまうような真実味を感じます。
小ぶりで、雑貨のような可愛らしさもありながら、充実の300首超!じっくりと、愛おしむべき歌集。(よ)