キュートな猫のイラストがいる装幀、わら半紙の質感の紙、「僕は行くよ」というタイトルから、何とも深い味わい、もの悲しさと味わいを感じる歌集。
大切なものじゃないから目に見える イオンモールに降るぼたん雪
カステラは乾きやすくて本題に辿りつかない感触がある
コーヒーを受け取ってから席に着くまでに九月の空気にふれる
この店のパンが好きだな虹の色よりもたくさん種類があって
一つ一つの光景も細やかで、美しさも感じるけれど、光景そのものよりも、消えてしまったもの、手に取れなかったもの、少し前の瞬間を慈しんでいるように感じました。
何かを諦めている訳ではなくて、こぼすまい、という強い目線も感じるけれど「僕は行くよ」と、運命を受け入れるように、手を放す景色を美しく感じます。