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第63回、現代歌人協会賞、受賞作。
灰色の表紙に、中身は、藁半紙の質感の紙。文字は太めのゴシックで、妙に主張が強い。文語体で書かれている。
モチーフは、家族や家、食事の内容が多く、一見近代の短歌みたいなのだけれど、作者は28才の頃に出版されている。
そんなに握りつぶしてどうするまた展く惣菜パンの袋であるに
自転車は置いて帰るとしてもだよあまりに遠い家路を辿る
ボケットに手なんかいれて転んだら父さんも母さんもゐなくて
わがからだ洗へばおのづから熱をもつものと知る秋の水風呂
草食んでぢつとしてゐる夜の猫とほいなあ いろんなところが
文語で、渋いモチーフや描き方だったりするのだけれど、思い描く像は、今の話だ。と、何故か分かる。文体やモチーフに捕らわれる事なく、描こうとするもの、詠もうとしているものが、形になっているのだなぁ…と思う。
そして、あぁ、なんかじんわりするなぁ…とか、ほっとしたりとか、切なくなったりとか、生々しく、山下さんだけの、手触りで、感じさせてくれる一冊。