本の仕事をしている人で集まる会in 北海道

第三回「本の仕事をしている人で集まる会」は、

ほうきのアトリエと本の店「がたんごとん」

で開催します!

◆日時 2019年1月27日 15時〜

※持ち物 交換会に使用するため、おすすめの本・好きな本を1冊お持ちください。

出版関係の方、書店の方、創作や作家活動をしている方と、交流できれば嬉しいです。

人数把握のため、参加の方はお問い合わせフォームか、SNSでメッセージを戴ければ幸いです。

書籍紹介ー色とりどりの日々ー小野田光さん『蝶は地下鉄をぬけて』

角川短歌賞でも、「ホッケーと和紙」という、アイスホッケーをしながら和紙職人になることを夢想する、という設定(というのも、実際の体験の話ではないそうでhttps://note.mu/hikaruonoda/n/n3329649dc9ba)の連作で話題になった小野田光さんです。

宣伝用に制作されたフリーペーパーはプロレスのライターさんのインタビュー。

歌集にも、おまけで素敵なイラストのポストカードがついてきます。

とにかく、要素が豊富で、自由なイメージの小野田さんです。

風を待つ額に満ちるあかるさのようなオムライスを見つめたい

 

 

「ブロッコリーは小さな森よ」とママは云うまるごとたべるなんていやだよ

完璧なしゃぼん玉もうさようなら姉のブラウス私に似合う

苺好きと決めつけられて枝切りの鋏でみずから髪切る花屋

なかなかにたのしい記憶でしたのでふともも裏に貼っておきます

ほんのりと揺れることばを零す間に春がスパークしてるじゃないか

 

 

・・・読んでいて、あれ、これは小野田さん本人?設定?とか、よく分からなくなったり、これ何かの比喩かな?とか、考え始めたりもしたのですが、途中から止めました 笑

個性的な作品を作っているからといって何か世の中をひっくり返してやろうとか。

軽い事を言っているようで実は深読みしてほしいとか・・・

といったような難しい事じゃなくて、ただ楽しんで欲しい。(もちろん小野田さん本人も、とっても楽しく暮らしている。はず)というのが全面に見えてきて、肩の力がみるみる抜けていきました。

 

 

考えろと宣う課長がとんかつにとんかつソースをどろりとかける

守備につく白地に赤のストライプ戦闘服にしてはかわいい

妙な声きこえてないか八月の醒めた配置の福笑いから

思いつく言葉飲み込みふつふつとひじきばかりを炊くベーシスト

泣きながら力うどんをすすってる人に遭遇したことがある

 

 

・・・社会人の悲哀のようなものとか、ふと見つけてしまう不安だとか。ネガティブに見えるものもあるけれど、そういうものも含めてのあたたかい世界であるとか、なんだか全て包み込んでしまうような、懐の大きなユーモアを感じました。

 

 

君のこと知りすぎたかな肖像を描けば極彩色が溶けあう

北風に堪えきれなくて剝がされた銀杏はひかりつつ逢いにゆく

秒針がないまま廻っている時計 君は結論から話しだす

 

 

・・・1人の事を知りすぎて、猛烈に色味のついた、すごく個性的な人にしか見えなくなってしまう。相手の息づかいも聞こえるくらいの、近くで暮らしている事を思います。

実は貼り付いていただけの様に、風ではがれてしまう銀杏。それでも、命の1つとして光輝いている。その輝きの様に、大切な1つの心を抱えながら、逢いにいく冬の道。

一番身近にありながら、予兆なく不如意に動く時計。同じ様に、いつも近くにいる人から、急な結論が放たれる事もあります。時計の音がしないからこそ、静けさが強く強調される。

ただ笑わせようという事ではなくて、繊細な描写など、感じ入る事もたくさんあります。色んな人がでてくる事で、自由に視点が行き来することで、生きるって色々あるけれど、なんだか楽しいなぁ。と思わせてくれる歌集のように思いました。

 

しらす丼に付くデザートはミルフィーユ細かい仕事があふれだす街

 

・・・ほんとにこんな店あるだろうか!あるかも知れない。ちょっと嫌なような・・・でもデザートは欲しいような・・・ミルフィーユみたいに細かい事とか、重なったごちゃごちゃしたこと色々あるけど、結果、ミルフィーユって美味しいよね!みたいな(すごく雑ですみません笑)でも、前向きになってしまうような歌集でした。バンザイ!

(よ)

書籍紹介—平易な言葉、限りない奥行き—宇都宮敦さん「picnic」

 

現代短歌社からの新刊、多くの人気を集める宇都宮敦さんの待望の歌集です。
(写真で分かりづらいですが、図鑑ばりに大きい・・・すごい存在感です)

だいじょうぶ 急ぐ旅ではないのだし 急いでないし 旅でもないし

など、普段短歌に親しんでいない方にチラシをお見せしても、ふふっ、と笑ってくれたりして、多くの方に詩歌に触れてほしいという店からすれば、とてもありがたいと思っていました。

日常の言葉や言い回しと全く隔たりなく、つぶやきの様に紡がれる短歌。それでも僕たちの生き方や、暮らしていて見えなくなってしまったもの、哲学や、繊細な感情などを、ダイレクトに伝えてくれる短歌だと思います。

おばちゃんが道のむこうで叫んでる 僕にむけてじゃないのはわかる

・・・一見すると、なんなんだ笑 という感じですが・・・笑 誰かが必死で呼びかけている。けれど、向こうとこちらには、越えられない壁があって、何もすることが出来ない疎外感を感じました。彼女に手を差し伸べられるのは僕じゃない。でも、僕には関係ない、という冷ややかさも感じられて、社会の寂しさのようなものも感じます。

なるほどね んじゃあ、最後に公園の水飲み場で水を飲んだのはいつ?

・・・何があったのか全然分からない!けれど、誰かと話をしていて、深刻な話なのかも知れないし、何か生水はまずい、とかどうでもいい話かも知れない。ただ、相手の話を落ち着いて、フランクに、受け入れながら答えようとする優しさを感じる。こんな細かい事、覚えている人がいるのだろうか・・・。大きな問題にしろ、些細な問題にしろ。日常の小さな事、足元の出来事を見落としながら、多くの人は生きているのだ。と気づかされました。

ボウリングだっつってんのになぜサンダル 靴下はある? あるの!? じゃいいや

・・・あるあるっぽい!し、なんなんだ笑。とまずなってしまいますが、風景や状況の描写を一切のぞいた、台詞だけの表現を使うことで相手との親しさ、フランクさ、前のめりの呼びかけがボウリング場の喧騒やピンの弾ける音まで聞こえてくるような・・・。ちょっとした事で、ええっ!って文句も言える関係だし、じゃいいよ。やろうぜ。って、すぐに何でも水に流せる関係。ちょっと羨ましいくらい。

嫌なやつになっちゃいそうだよ もうじゅうぶん嫌なやつだよと抱きしめられる

言葉が平易な分、リアルな出来事として、心に直接ささる言葉が多い様に感じます。この短い歌のなかで、感情が何度も往復している。「嫌なやつになっちゃいそう」という時点で、本人にとっては、もう嫌なやつにもうなっている。でも、どうにか踏みとどまろうとしている。帰ってきたい。助けてほしい。この相手なら、どうにかしてくれるんじゃないだろうか。自分の一番弱い部分をさらけ出して、救いを求めている一幕。そこへ「もうじゅうぶん嫌なやつだよ」と、そんな事もう知ってた。お前の弱さなんて今始まった事じゃないし、分かっててこれまで付き合ってきたんだ。当然だろう?と、全てを肯定してくれるように抱きしめてくれる。・・・など、説明しすぎて野暮の極みですが 笑

こんなにフラットな言葉で、こんなに密度の高い言葉たちが集まっていて、驚きの歌集です。

いつも、紹介したい気持ちが先行して、多く引きすぎてしまうのですが・・・楽しみにしている方に怒られてしまうかと思うので控えめに・・・

※書店限定で付いてくる、書き下ろしエッセイも素敵でした!一連の作品に、またひとつ奥行きを足して、レイヤーをかけてくれるように感じます。装丁も、図録のようなサイズだったり、複写紙(?)のように裏面に薄い青の色がついていたり・・・奥行きのある一冊です。最後にパンチのあるやつを

ネコかわいいよ まず大きさからしてかわいい っていうか大きさがかわいい

ネコのかわいさに理由なんていらない!全肯定!笑
説明不要で愛に溢れる歌集。是非ご一読下さい。
(よ)