書籍紹介―雪舟えまさん「はーはー姫が彼女の王子たちに出逢うまで」

「はーはー姫が彼女の王子たちに出逢うまで」朗読&サイン会
日時:4月26日(木)19時~20時
場所:がたんごとん
http://gatan-goton-shop.com/
札幌市中央区南1条西15丁目1−319 605号
参加費:無料

も控えております。一足先に、歌集についてご紹介させてください!

―恋は盲目、と言いますが、雪舟さんの世界は恋と魔法と空想、その先の世界へどんどん旅立っていく感覚がありました。閉ざされた世界にわき目もふらず進んでいく様なドライブ感と、直進性ゆえの恐さのようなものもちょっぴり感じました。

フライ追うように走って しあわせだ、しあわせだって退路を断って
水盤に満月ひとつ持ってもう動けなかった幸せでした
立てないくらい小さな星にいるみたい抱きしめるのは倒れるときだ

―本当に夢中になる、という事は、帰り道がなくなるという事なのかも知れません。命がけ!で生きています。

酔いました 何度も何度もきみを産み何度もきみにお嫁にゆくと
俺の心はきれいじゃないなんて上等だ わたしは空に目くばせをした

―また、現実以外の世界とも繋がっている方です。巫女的、というよりは、物語や魔法に近い。恋のために何度も転生する。雲の上に、どんな友人がいるんでしょう・・・。上等だ、と、わざと悪ぶった言い方が、逆に親しさを強調します。

タッパーの跡がうまそうとご飯を君よろこべばほんとうに夜
わたしには代われないおつかい抱いて夕立のなか蛾は歩きおり

―でも、すごく現実的な描写も多くて・・・魔法的な歌と相互に強め合う感じも受けました。
夜のご飯はタッパーですよねー!雪舟さんの本当の夜とは、「君」がいて、ともに過ごし、ささいな事を楽しんでいける日々のことなのだと思います。得難い喜び・・・
蛾は蛾で、それぞれの命と使命があって、必死に生きている。雨の蛾、というのは渋くて、近代短歌にもありそうなモチーフですが、使命や命、じゃなくておつかい、という当たりがすごく雪舟さんらしいカジュアルさや視点を表しているなぁ・・・と思いました。

野のような家の姉妹は眠るとき赤い小さなとぐろを巻いた

―カフカをほうふつとさせますね・・・ちょっと薄暗さや異界のような怪しさもありながら、丸まって眠る人のビジュアルもリアルに想像しました。

夏布団わたしのパンツがみえたならそれはおみくじ、いつも大吉
僕たちは大当たりだ何があっても音もなくすぎてゆく夜にも
ああっご飯 二人になると落雷のように食事はおもいだされる

―二人だけの、すごく狭い世界。その中がすごく濃くて、満たされていて、大吉、大当たり、など、大ぶりな全肯定(笑) 無菌空間のようにプレーンな幸せを詠っています。

目ざめたら息が乱れていた私自由になるのかもしれなくて
ふたたびの思春期これはススン期だ息するだけで僕はかがやく
自転車の重さも軽さも楽しくて半月のような町をゆくのさ

―暗さはないものの、解放されて新たなところへ旅立つ志向も多くあります。どこへ?というと、やはり雪舟さん的な新しい地平を感じられて、すごく魅力的な世界像を想像します。ススン期の世界・・・行ってみたい・・・
半月のように、普段は見えない領域が大きくあって、ふわっ、と向こう側に行ってしまうような感じがあります。

・・・歌集に、ネタバレ、というものがあるか分かりませんが、4章、「そして、はーはー姫は彼女の王子たちに出逢う」以降は、個人的には、そっちかー!!!というくらいの大転換だったので、詳細は控えようと思うのですが・・・刺さったものだけ引いておきます!

溶き卵のようにひろがる夕やけにたったひとりの眼鏡に会いに
股ぐらへミートボールの軌跡きらきら光るのを声も出ず 春

―現実、恋、魔法、空想から、はーはー姫が王子たちに出逢うまで・・・ゆらぎながら、旅立っていく流れが、一本の映画を見るように楽しめました。

こんなに書いても全然書ききれない、魅力的な歌集です!
星四朗さんのあとがきも、情熱ほとばしっています。
ぜひぜひ、お手に取ってご覧くださいませ!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。